マイナンバー法の概要

1.マイナンバー制度の目的
マイナンバー法においては、次の3つの目的を掲げています。

① 国民の利便性の向上
② 行政の効率化
③ 公平・公正な社会の実現

また、このマイナンバー制度の導入により、主に次の3つの効果があると言われています。

① 正確な情報の管理・正確な情報の連携が可能となる。
② より正確な所得の把握が可能となる。
③ きめ細やかな社会保障が可能となる。

2.個人番号、法人番号とは

(1)個人番号
平成28年(2016年)1月より利用が開始される個人番号については、平成27年(2015年)10月以降、住民票の記載に基づいて、その居住する市区町村から「通知カード」が送付され、各人に個人番号(12桁)が通知されることとなります(マイナンバー法8条2項2号、7条1項)。

個人番号については、赤ちゃんからお年寄りまでの全ての国民及び日本国内に住民登録のある外国人などを対象に、日本国内に住所を有する全ての者に付番されます。ただし、日本国民であっても、海外赴任などで国外に滞在している者には個人番号は付番されず、帰国して住民票が作成される際に個人番号の指定や通知が行われることになります。

個人番号については、一生同じ番号が使用され、原則として変更することができません。そのため、好みの数字ではない、並び順が悪いなどの理由で、個人番号の変更を行うことは認められていません。

ただし、個人番号が漏洩して不正に用いられる恐れがあると認められるときには、例外的に個人番号を変更することができます(マイナンバー法7条2項)。

(2)法人番号
法人番号については、主として税の分野で使用されることが想定されているため、国税庁長官が法務省の有する会社法人等番号などを基礎として付番を行うものとし、その対象を、①国の機関、②地方公共団体、③設立登記をした法人、④所得税法230条等の届出書を提出することとされている法人又は人格のない社団――と規定しています(マイナンバー法58条1項)。さらに、⑤前記以外の法人又は人格のない社団等であっても、日本で経済活動等を営み国税・地方税の法定調書を提出する義務がある又は法定調書の記載対象となる法人又は人格のない社団等についても、これらの者からの届出を受けた場合には、法人番号が付番されることとなります(同条2項)。

法人番号は、1法人に1つの番号(13桁)が付され、法人の支店や事業所に指定されることはありません。これらの法人番号の通知についても、個人番号と同様に、平成27年10月から通知が開始される予定です。

なお、法人番号については、後述のとおり、個人番号のような利用範囲の限定がなされておらず、社会保障・税・災害対策以外の分野においても、自由に利用することが想定されています。したがって、法人番号については、国税庁法人番号公表サイトにおいて、名称や所在地とともに、原則としてインターネット上で検索できるようなシステムが作られる予定となっています。

3.マイナンバーの利用範囲 ― 社会保障・税・災害対策

個人番号は、あらかじめ法律で規定した社会保障・税及び防災・災害対策分野での事務に限定し、「必要な限度で」のみ利用することができ、目的外の利用が禁止されています(マイナンバー法9条)。

すなわち、会社は、自社の従業員であるからといって当然に従業員の個人番号の利用が認められているわけではなく、給与所得に関する源泉徴収票作成事務、健康保険・年金保険届出事務など、マイナンバー法であらかじめ特定された事務を処理する必要がある場合に限って、従業員から取得した個人番号を利用することができることとなります。

そこで、平成28年1月からのマイナンバー法の施行に向けて、今後、民間の事業者においては、社内のどのような事務手続にマイナンバー法が関係するのか、その洗い出し作業を順次行っていく必要があります。

4.マイナンバー法を理解する6つのポイント

事業者の立場から理解しておくべきポイントは6つ

主に中小企業の事業者が、今後、従業員等の個人番号を書類に記載して「個人番号関係事務」を行う上で、少なくとも理解しておくべきマイナンバー法のポイントは、以下のとおりです。

① 本人確認の措置(マイナンバー法16条)
② 目的外利用の禁止(同法9条、29条1項)
③ 提供要求の制限(同法15条)
④ 特定個人情報の提供の規制(同法19条)
⑤ 特定個人情報の収集・保管制限(同法20条、28条)
⑥ 個人番号の安全管理措置(同法12条)

(1)本人確認措置

事業者は、給与所得の源泉徴収票の作成、株主への配当金の支払いに伴う支払調書の作成など、個人番号を利用する事務(マイナンバー法では、「個人番号関係事務」といいます)を行う場合には、従業員や株主などから各人の個人番号を提供してもらう必要があります。

そこで、マイナンバー法では、「個人番号利用事務等実施者」(すなわち、個人番号を利用する事務を行う事業者など)が個人番号を受け取る際には、個人番号を申告してもらうだけではなく、同時に、「本人確認措置」を行わなければならないものとされています(マイナンバー法16条)。

本人確認措置の具体的な方法としては、①通知カードとその他の身分証明書の提示、②個人番号カードの提示――などの方法が挙げられています。

上記②の「個人番号カード」については、氏名・住所・生年月日・性別などの基本4情報とともに個人番号や顔写真が掲載され、厳格な本人確認を経た上で交付されるものであるから、本人確認措置として「個人番号カード」の提示のみで足りるものとされています。
なお、事業者が本人確認を行う場合には、確実に従業員「本人」から本人の当該個人番号を受け取ることが必要であり、例外的に、従業員が扶養控除等申告書に扶養親族の個人番号を記載して会社に提出する場合には、扶養親族の本人確認については、申告書を提出する従業員が行うことで足りるものとされています。

(2)目的外利用の禁止

個人番号は、あらかじめ法律で規定した社会保障・税及び防災・災害対策分野での事務に限定し、「必要な限度で」のみ利用することができ、目的外の利用は原則的に禁止されています(マイナンバー法9条)。

また、個人番号を利用する事務を行う事業者(「個人番号利用事務実施者」という)は、当該事務を処理するために「必要がある場合に限って」、本人に対して個人番号の提供を求めることができます(マイナンバー法14条)。

なお、現在の個人情報保護法では、「本人の同意があるとき」は個人情報の目的外利用が認められていますが(行政個人情報保護法8条2項1号)、マイナンバー法においては、法律で認められた利用目的を超える個人番号の目的外利用は原則として禁止されています(マイナンバー法9条、29条1項)。

ただし、①人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって本人の同意があるか又は本人の同意を得ることが困難であるとき(マイナンバー法29条1項から3項、31条、32条)、②金融機関が激甚災害時に金銭の支払いを行う場合に個人番号を利用する場合(マイナンバー法9条4項、29条2項・3項、31条、32条)の2つの場合にのみ、例外的に、目的外利用が認められているに過ぎません。

(3)提供要求の制限

マイナンバー法では、個人番号の記載がある「特定個人情報」を提供できる場合を限定列挙し、それ以外の場合に、「他人に個人番号の提供を求めてはならない」と規定されています(マイナンバー法15条)。

ただし、同居の子どもや配偶者等の同一世帯の者の個人番号を求めることは例外的に許されています(同条括弧書き)。

したがって、マイナンバー法で認められた業務以外で、個人番号を受け取ってしまったような場合には、直ちに返却や廃棄等の対応が必要となります。例えば、ローン契約の審査のために個人番号の記載のある源泉徴収票を受け取ってしまった場合には、直ちに個人番号を黒塗りするなどの対応を行わなければならず、十分な注意が必要です。

(4)特定個人情報の提供の規制

事業者が個人番号などの「特定個人情報」を提供できるのは、マイナンバー法に規定された特定の事務を行うために、行政機関などに法定調書を提供する場合等、必要な限度に限られています。

マイナンバー法では、「何人も」、マイナンバー法で限定的に認められた場合を除き、「特定個人情報の提供をしてはならない」と規定されています(マイナンバー法19条)。そこで、個人番号に関する事務を行うのに必要な場合以外には、仮に当該従業員の同意があったとしても、第三者に「特定個人情報」を提供してはならないこととなります。

なお、実務上は、会社が源泉徴収票作成事務を含む給与事務を同一グループの子会社に委託したり、税理士や社会保険労務士などに委託することが多いと言えますが、これらの場合には、マイナンバー法19条第5号により委託先による特定個人情報の提供が認められているところです。

そして、これらの業務委託を行う場合には、委託先において、委託者自らが果たすべき安全管理措置と同等の措置が講じられるよう、委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければならないものとされています。

したがって、今後は、給与事務などの委託先の選定においては、(税理士や社会保険労務士など)委託先においてマイナンバー法の求める安全管理措置がなされているかどうか十分に留意する必要があり、委託先との契約にあたっては、マイナンバー法の求める安全管理措置を取るよう義務付ける契約を新たに締結しておくべきものといえます。

(5)特定個人情報の収集・保管規制

マイナンバー法では、「何人も」、マイナンバー法で認められた場合を除き、「特定個人情報を収集し、又は保管してはならない」と規定されています(同法20条)。すなわち、個人番号を含む特定個人情報は、マイナンバー法で限定的に認められた事務を処理するために収集又は保管されるのであるから、それらの事務を行う必要がある場合に限り、特定個人情報を保管し続けることができるものと言えます。ただし、提供要求の制限と同様に、同居の子どもや配偶者等の同一世帯の者の個人番号を収集・保管することは例外的に許されています(同条括弧書き)。

また、個人番号が記載された書類等については、所管法令によって一定期間の保存が義務づけられていることから、少なくともその期間内は保管しておかなければなりません。しかしながら、それらの事務を処理する必要がなくなり、かつ所管法令において定められた保存期間を経過した場合には、個人番号についてはできる限り速やかに廃棄又は削除しなければなりません(個人番号を削除さえすれば、その他の個人情報を保管し続けること自体は可能です)。

従って、個人番号を含む特定個人情報を保管するシステムを構築する際には、あらかじめ保管期間経過後に速やかに個人番号を廃棄又は削除できるようなシステムを構築しておくことが必須であるといえます。

(6)個人番号の安全管理措置

個人番号利用事務等を処理する者は、「個人番号の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人番号の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない」と規定されています(マイナンバー法12条)。特に、マイナンバー法では、1件でも個人番号を取り扱うのであれば、小規模事業者(現行の個人情報保護法に基づく安全管理体制の作成などが義務付けられていない5000人以下の情報を取り扱う事業者)においても、安全管理措置が義務づけられています。

ただし、この安全管理措置は、一律の措置が義務づけられているわけではなく、取り扱う特定個人情報の量、利用環境等に応じて相応な措置を講じることが求められているに過ぎません。

安全管理措置の具体的な内容については、特定個人情報保護委員会からガイドラインが公表されているので、かかるガイドラインを元に、「特定個人情報の適正な取扱いに関する基本方針」「特定個人情報取扱規程」、その他マニュアルや規程類をあらかじめ作成しておくことが必要です。

5.罰則等
(1)個人番号の悪用等に対する法定刑

マイナンバー法は、個人情報保護法の特別法という性格を持っており、個人情報保護法と同様に、一定の禁止行為に対して罰則が規定されています(マイナンバー法67条~77条)。

マイナンバー法では、個人番号が悪用された場合には、深刻なプライバシー侵害の危険性が高まることに鑑み、個人番号を含む特定個人情報について、一般法である「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法関連の1法であり、行政機関における個人情報の取扱いについて定めた法律。略称は「行政機関個人情報保護法」)よりも極めて厳しい規制が課されており、罰則については概ね2倍程度の法定刑が規定されています。

例えば、個人番号が記載された名簿を不正に持ち出した場合には、最長で懲役4年が科されるおそれがあります。したがって、民間の事業者においては、現在よりも高度で厳格な情報管理体制を構築することが必要であるといえます。

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(2)7種類の刑罰対象行為

マイナンバー法において、民間の事業者及びその従業者に対して課せられる罰則として、7種類の行為が挙げられており(同法67条~74条)、従業員が業務に関して各行為を行った場合には、当該従業員とともに民間企業も同時に処罰する両罰規定も設けられています。

(3)特定個人情報保護委員会の設置

マイナンバー法では、マイナンバー制度の信頼性を損なう情報漏洩を防止することを目的として、個人番号を含む個人情報(特定個人情報)を保護する組織として内閣府外局に「特定個人情報保護委員会」を設置するものとしました。

この特定個人情報保護委員会は、特定個人情報の取扱いに関する監視・監督(立ち入り検査、報告徴求、指導・助言、勧告・命令等の権限行使)、情報保護評価に関する指針の策定や評価書の証人、特定個人情報の保護についての広報や啓発、これらの事務のために必要となる調査研究及び国際協力などを行うものとされています(「特定個人情報保護委員会」ホームページhttp://www.ppc.go.jp/aboutus/commission/より)。

すでに、平成26年12月11日には、特定個人情報保護委員会より『特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)』、及び『「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」及び「(別冊)金融業務における特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」に関するQ&A』が公表され、相談ダイヤルなども開設されるようです。

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