セクハラ

セクハラとは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動をいい、それに対する労働者の対応により、当該労働者が労働条件において不利益を受ける「対価型」と、性的な言動により女性労働者の就業環境が害される「環境型」の2つに大別されています(雇用機会均等法11条、厚生労働省のセクハラ指針(平成18年厚生労働省告示第615号)など)。

違法とされる場合とは

判例によれば、「職場において、男性の上司が部下の女性に対し、その地位を利用して、女性の意に反する性的言動に出た場合、これがすべて違法と評価されるものではなく」と述べた上で、「その行為の態様、行為者である男性の職務上の地位、年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、当該言動の行われた場所、その言動の反復・継続性、被害女性の対応等を総合的にみて、それらが社会的見地から不相当とされる程度のものである場合には、・・・人格権を侵害するものとして、違法となる」という判断基準を示しています(名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日、同判決は上告審である最高裁平成11年7月16日でも支持されています)。

セクハラに関する実際の判例

裁判例に登場するセクハラ事案は、比較的悪性の強い事案が多いと言えますが、セクハラをめぐる損害賠償額は、平成11年以降、事案の増加に伴って高額化の傾向が見られるところです。
また、セクハラのため退職を余儀なくされたような事案では、退職による逸失利益として給料6ヶ月分前後の損害賠償額を認めているようです。

1.金沢セクハラ事件
(名古屋高裁金沢支部平成8年10月30日、最高裁平成11年7月16日判決により確定)

家政婦の業務(食事の支度、選択、部屋の片づけ、庭の手入れ、電話番など)に従事していた原告女性に対し、代表取締役の上司が原告の体に触れたり、胸を触ったり、抱きつこうとしたり、性交渉を求めるなどの行為をした事案。
→違法性が認められた。慰謝料120万円。

 

2.岡山セクハラ事件
(岡山地裁平成14年5月15日)

上司である専務取締役が派遣会社の女性支店長ら原告2名に対して、異性関係を問いただしたり、肉体関係を迫る等の行為を行った。
女性支店長ら2名は会社にセクハラ行為を訴えたが、会社はセクハラ行為を確認できないとして、専務を含めた上記3名を降格、減給処分とした。
その後、専務は自らのセクハラ行為を否定のうえ、原告らは淫乱である等と他の従業員に言い回るようになった。
その後、原告らには給与が入金されなくなり、退職を余儀なくされたという事案。
→被告上司の不法行為責任を認めた。
また、会社は、原告らが職場に復帰できなくなるまで職場環境の悪化を放置したとして、会社自身の不法行為責任も認めた。
上司の原告X1に対する慰謝料は200万円、X2に対する慰謝料は30万円、会社の原告らに対する慰謝料は各50万円、退職しなければ得られたであろう逸失利益として1年間分の給与相当額の損害賠償(合計1528万円、1480万円)が認められた。

 

3.沼津セクハラ事件
(静岡地裁沼津支部平成11年2月26日)

上司である被告Bは入社直後から交際を迫り、原告を誘って飲食をした後、原告の運転していた車の中で原告に寄りかかったり、下着に手を入れるなどの行為をし、その後原告から付き合いを断られると、被告Aとともに原告が支店長と特別の関係にあるかのような噂を流した。
上司である被告Aは、原告を頻繁に食事に誘い、原告の自宅にしばしば電話をかけたり、訪問したりしたほか、原告の歓心を買うため様々なプレゼントをし、廊下や階段で原告に抱きつくなどの行為、被告Bとともに上記噂を流すなどの行為を行った。
いずれも被告らの不法行為責任を認めた。会社には使用者責任が認められるとともに、職場環境を調整すべき義務の違反が認められるとして会社自身の不法行為責任も認められた。慰謝料200万円。

 

4.福岡セクハラ事件
(福岡地裁平成4年4月16日)

上司が社内の関係者に原告の私生活ことに異性関係に言及してそれが乱脈であるかのようにその性向を非難する発言をしたこと、原告の異性関係者を具体的に挙げて社内外の関係者に噂を流したこと、直接原告に対してその私生活の在り方を揶揄するなどの行為を行い、それを専務に真実であるかのように報告し、最終的には原告を退職せしめたという事案。
上司の不法行為責任を認めるとともに、会社の使用者責任も認めた。慰謝料150万円(原告には被告上司に対してライバル意識を強く持ち、自ら派閥的な行動を取り、攻撃的な行動に出ていたことなどの事情も考慮された)。

 

5.東北大学事件
(仙台地判平成11年5月24日)

大学院生であった原告の指導教官(被告)が、修士論文の指導中に性的な冗談を言う、原告の顔を凝視し続けるといった原告に不快感を与える言動をし、その後原告に交際を迫り、原告に抱きついたり、手を握るなどの身体的接触を繰り返すなどの行為を行った。
その後、原告が不安神経症で通院していることを奇貨として、その治療を名目に肉体関係を結ばせた。
さらに、原告から距離を置いて欲しいと明言されると、被告は、締め切り間際に論文の書き直しを命じたり、自殺をほのめかすような異様な電話をかけるなどの行為を行ったという事案。
被告の不法行為責任を認めた。慰謝料750万円(大学側の調査に対して、偽造の診断書を提出したり、他大学の教官に偽証を依頼するなどの行為も行っていたことが考慮された)。

 

6.東京セクハラT菓子店事件
(東京高裁平成20年9月10日)

上司である店長Aが契約社員の原告に対して、「頭がおかしいんじゃないの」、「エイズ検査を受けた方がいいんじゃない」、「処女にみえるけど処女じゃないでしょう」などの発言をしたという事案。
→一審は原告敗訴。二審は、上記発言が部下に対する指導目的から発したものであるとしても、許容される限度を超えた発言であるとして、不法行為責任を認めた。慰謝料50万円、逸失利益として給料6ヶ月分の99万円を認めた。

セクハラ問題の解決方法は?

セクハラ事案の解決には、通常、以下のステップを踏むことになります。

1.セクハラの実態について記録すること(証拠化)
セクハラ事案は、当事者間の密室での言動が問題となりますので、その言動を立証できるかどうかが決め手となります。従って、ICレコーダーでの録音や詳細なメモを毎日取るなど、なるべく多くの証拠を収集することが大切です。なお、セクハラの相手には、「同意していた」という反論をさせないためにも、毅然とした態度で「No」の意思表示を行うことが大切です。

2.弁護士を通じて、警告書を送付する(警告)。
弁護士より内容証明郵便を送付し、加害者にセクハラ行為をやめるよう申し入れをします(内容証明郵便で送付すれば事後の証拠ともなります)。この段階で、加害者と示談が成立することもあります。

3.弁護士を通じて、会社側に適切な措置の申し入れ(会社への申し入れ)
男女雇用機会均等法第21条によれば、事業主には、セクハラ対策のため雇用管理上必要な措置を講ずることが義務づけられています。
そこで、会社に対して、当該セクハラについて適切な調査と処分、予防措置などを講ずるよう申し入れを行います。

4.労働審判、仮処分、民事訴訟の申立て(裁判手続)
上記の方法で解決に至らない場合には、裁判手続の利用を考えます。裁判手続のうち労働審判は非公開の手続であるので、セクハラ事案においては被害者のプライバシーが守られるといったメリットがあります。

5.刑事告訴、労災申請など
セクハラ事案の中でも、強制わいせつや強姦、傷害などの犯罪行為が行われた場合には、刑事告訴を検討します。また、近年、セクハラを原因とする精神疾患について労災が認められていますので、精神疾患を発症した場合には労災申請も合わせて検討することになります。

 

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