労働者派遣法改正のポイント

1.労働者派遣法の改正

リーマンショックの際に、多くの企業において“派遣切り”が行われたことにより、派遣社員の不安定な地位や低賃金などが社会問題となっていました。そこで、こうした社会問題に対処するため、法律の名称に「派遣労働者の保護」を新たに明記するとともに、法律の目的(第1条)にも「派遣労働者の保護を図り、派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資すること」を明記し、新たに派遣労働者の保護を図る施策を導入しました。

この平成24年労働者派遣法の改正は多岐に及んでおり、その概要を下記の表にまとめました。改正法の施行日については、労働契約申込みみなし制度について平成27年10月1日とされていますが、それ以外の改正については、「平成24年10月1日」施行とされています。

【主な改正ポイント】
今回の改正に当たって、派遣元(派遣会社)及び派遣先(派遣社員を受け入れる会社)の責務として新たに課せられる事項を、下記のとおり整理しました。

派遣元 派遣先
日雇派遣の原則禁止(法35の3)
・グループ企業派遣の8割規制(法23③、23の2)
・実績報告の義務化
離職後1年以内の労働者を元の勤務先に派遣することの禁止(法35の4) 離職後1年以内の労働者派遣の受入禁止、該当する場合の派遣元への通知(法40の6)
労働者派遣契約の解除の際の、派遣元および派遣先における派遣労働者の新たな就業の機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用負担等の措置を義務化(法29の2)
有期雇用派遣労働者等の無期雇用への転換推進措置の努力義務化(法30)
マージン率等の情報公開の義務化(法23⑤)
派遣労働者の賃金等の決定にあたり、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮(法30の2) 均衡待遇の確保に向けた情報提供等の努力義務(法40③)
賃金の額の見込みなど待遇に関する事項等の説明を義務化(法31の2)
労働者派遣に関する料金額の明示を義務化(法34の2)
派遣先への通知事項に派遣労働者が無期雇用労働者であるか否かを追加(法35①II)
違法派遣の場合、派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす(労働契約申込みみなし制度)【平成27年10月1日施行】
処分逃れを防止するため労働者派遣事業の許可等の欠格事由の整備
【国会で修正された事項】
国会において、当初の政府案より修正された項目は下記のとおりです。今後の改正が予想されるところであり、留意すべき事項といえます。
・登録型派遣・製造業務派遣の原則禁止
・日雇派遣の範囲を「2か月以内」から「30日以内」に修正するとともに、原則禁止の例外に「雇用機会の確保が特に困難な場合等」を追加
・労働契約申し込みみなし制度の施行日を「法の施行から3年後」に延期

 

2.派遣社員を受け入れている派遣先が留意すべきポイント

上記の改正を受けて、派遣社員を受け入れている派遣先の会社が留意すべきポイントは、以下のとおりです。

(1)日雇派遣の原則禁止、原則禁止の例外となる「業務」
(2)離職後1年以内の労働者派遣の禁止
(3)派遣契約の中途解除にあたり講ずべき措置の明確化
(4)労働契約申込みみなし制度

 

2.1 日雇派遣の原則禁止

(1)原則:
日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者(日雇労働者)について、労働者派遣を禁止

(2)例外1:
日雇派遣の原則禁止の例外となる「業務」
 ○ソフトウェア開発 ○機械設計 ○事務用機器操作
 ○通訳、翻訳、速記 ○秘書 ○ファイリング ○調査 ○財務処理
 ○取引文書作成 ○デモンストレーション ○添乗 ○受付・案内
 ○研究開発 ○事業の実施体制の企画、立案 ○書籍等の制作・編集
 ○広告デザイン ○OAインストラクション
 ○セールスエンジニアの営業、金融商品の営業

(3)例外2:
日雇派遣の原則禁止の例外となる「場合」
 (1)60歳以上の者
 (2)雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる昼間学生)
 (3)生業収入が500万円以上の者(副業)
 (4)生計を一にする配偶者等の収入により生計を維持する者であり、世帯収入の額が500万円以上(主たる生計者以外の者)

2.2 離職後1年以内の労働者派遣の禁止

(1)改正法の内容
 離職した労働者を離職後1年以内に離職前事業者へ派遣労働者として派遣することを禁止(派遣元事業主の義務)
 派遣先となる事業者が離職後1年以内の労働者を派遣労働者として受け入れること、すなわち正社員を一旦退職させて派遣社員として就業させることを禁止(派遣先の義務:派遣先は、当該派遣労働者が離職後1年以内であるときは、書面等によりその旨を派遣元事業主に通知しなければならない)

(2)禁止対象となる派遣先: 「事業者」単位であって、「事業所」単位ではない

(3)禁止対象から除外される派遣労働者: 60歳以上の定年退職者

2.3 派遣契約の中途解除時への対応

(1)改正法の内容
 派遣先の都合により派遣契約を解除する場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用の負担等の措置を講ずるよう、派遣先に対して義務化
 派遣契約に、派遣契約の解除時に講ずる派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用の負担等に関する事項を盛り込むことを明示

(2)派遣先の対応
今回の改正は、これまで厚生労働省の「派遣先の講ずべき措置に関する指針」において述べられていた事項がそのまま法律に盛り込まれただけであり、今回の改正に伴って新たな対応が求められているわけではありません。

派遣先に求められているのは、「派遣先の都合により派遣契約を解除する場合」において、派遣労働者の新たな就業機会を確保する措置や、休業手当の支払いに要する費用を負担する措置を講ずるよう求めているだけであり、派遣先にこれらの全ての費用を負担するよう求めているわけではないことに留意が必要です。

法が求めているのは、「派遣先の都合により派遣契約を解除する場合」における休業手当等の費用負担について、派遣元と派遣先との間で、事前に派遣契約書において明示しなければならないということのみです。
休業手当等の費用負担について、当然派遣先において負担しなければならないというわけではありませんので、この点については、派遣元と派遣契約を締結する際に、交渉することとなります。

2.4 労働契約申込みみなし制度

(1)改正法の内容
派遣先が一定の違法派遣を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して、当該派遣労働者の派遣元事業主における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす制度(労働契約申込みみなしの期間は1年間。すなわち、1年間は申込みを撤回できない。)

(2)労働契約申込みみなし制度の対象となる「違法派遣」
 ・労働者派遣の禁止業務(港湾運送業務、建設業務等)に従事させた場合
 ・無許可・無届の派遣基事業主から労働者派遣を受け入れた場合
 ・派遣可能期間を超えて労働者派遣を受け入れた場合
 ・いわゆる偽装請負の場合

以上のとおり、平成24年の労働者派遣法の改正は多岐にわたっており、派遣法の規定もなかなか素人には分かりづらいものであるため、すぐに理解するのは困難であると思います。
平成24年労働者派遣法改正に関する対応について、疑問や不明な点がございましたら、お早めに当事務所までお問い合わせください。

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