賃金カットの方策
(1) 賃金の各種抑制措置
いきなり基本給を引き下げることは労働条件の不当な不利益変更に該当する可能性がありますので、まずは、従業員の基本給カットを行う前に、定期昇給の廃止、ベースアップの抑制、賞与支給率の削減、時間外労働の抑制などの措置を実行することにより、ある程度の賃金支払いを抑制することが先決となります。
(2) 合意による賃金の引き下げ
過去の判例では、従業員の同意には自由意思があり、かつ、自由意思に基づく同意と認めるに足りる合理的な理由が客観的に必要であるとされています。
従って、賃金を減額せざるを得ない会社の財務状況の説明、具体的な減額幅の開示など、十分に従業員に説明の上、各従業員から同意(できれば書面による同意)を得ることが好ましいといえます。なお、これと同時に、賃金規程の改訂も行います。
(3) 一方的な引下げ措置
(i) 職能資格・等級の導入や同制度適用による等級等の見直しによる引下げ
年功序列型賃金制度を成果主義型賃金に改めたり、職能資格・等級の見直しを行って、資格・等級の引下げなどを行う手法です。
判例の中には、能力主義、成果主義への変更は低評価者には不利益となる一方、普通程度の評価者の場合には補償制度(経過措置)もあり、その不利益の程度も小さく、8割程度の従業員の給与が増額していること、企業が赤字経営であり、収支改善のため労働生産性を向上させる必要があったこと、組合とも合意に至らないまでも10数回に及ぶ団交を尽くしていること等から高度な必要性に基づいた合理性があるとして、賃金制度の変更を認めているものがあります。
(ii) 全従業員に対する一律減額
全従業員について、資金原資を一定割合で一律に減額することをいいます。
判例の中には、2年間限定の10%程度の基準賃金の減額、定年延長に伴う基本給の3割減額が認められた事案がある一方、正社員の賃金25%の一律減額措置を合理性なしと認めた判例もあるようです。
(iii) 役職定年制による高年齢層の賃金引き下げ
判例では、高齢の特定階層への狙い打ち的な賃下げ(賃金の減額幅は、55歳に到達した年度、従来の役職、賃金の内容等によって異なるが、概ね40数パーセント程度から50数パーセント程度に達する)について、このような高齢の特定層のみに不利益を受忍させることは相当でないとして、就業規則変更の合理性が認められないと判示しています。
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